『ふあぁ…眠…』
そう、私があくびをしたのは、通学中の電車での事。
『あ、(らん)ちゃんおはよー』
『あ、(みさき)先輩!おはようございまっス!』
『いやー…蘭ちゃん眠そうねー!
何か有ったのー?』
と、部活の先輩の岬先輩は聞いてくる。
『それがですねー…懐かしい夢を見たんっス』
『おー!何々(なになに)ー?』
『あ、でも、岬先輩が喜ぶような、恋愛物じゃ無いっスよー?』
『それでも!ここまで来たら気になるじゃん!』
と、岬先輩は、ゴシップが大好きな記者のように問い詰めてくる。
『えーと…中学の頃に、とある人に助けられたって話です』
『ねぇー!もっと詳しくー!!』
もう、レベルは好奇心旺盛な野次馬だ。
それでも私は…
『ここからは秘密っス!』と、私は笑顔で言う。
この気持ちだけは、この話だけは、あの人との秘密にしたいんです。
なので、岬先輩でも内緒です。
と、心の中で呟く。
すると…
『お、成瀬(なるせ)じゃん!おはよー』
『おはよ
て、その子は?』
と、何処かで聞いたような声がする。
でも、まさか、そんなわけ…
『あ、蘭ちゃん?
蘭ちゃんは、部活の後輩ー』
と、岬先輩が、私から見えない位置に居た誰かの方へと優しく引っ張る。
すると、そこには…
『『あ…』』

二人は固まった。
仕方ない。
だって、話をしていた所に本人が来るなんて…

『ひ、久しぶりっス…て、覚えてないかもしれないですけど…』

そう言いながら、彼女は不安そうに俺を見る。
『お、覚えてるよ…君が中学の時の…』
『お、覚えてるんっスね!嬉しいっス!!』
『あ、ああ、なら、良かった』
かなり眩しい笑顔に困ってしまう。

すると…
『ね!ね!二人はどんな関係なの!?
気になるじゃん!教えてよ!
蘭ちゃん!さっきの話と何か、関係が有るの?』
と、はしゃぎながら、興奮ぎみに岬先輩が話しかけてくる。
(マズイ…先輩から逃げないと…このテンションの先輩はヤバイ…)
と、思い始めると…
『次は、○▲駅ー…○▲駅ー…ドアは』
『っ!?』
何かをひらめいたような、成瀬?先輩の顔。
それに、もう、(たく)すしかない…
すると…

『その場しのぎでゴメン!』と、耳元で声がした。

そして、学校の最寄の駅に着いた瞬間、『行くよ!』と、急に手を引かれて、『キャー!お熱いねぇー』と、騒ぐ岬先輩を放置して、成瀬?先輩はどんどん進む。
走る。
走る。
私も合わせて走る。

まさか、再会するなんて…
何かが始まる予感がした。

そんな、朝の当たり前じゃない出来事。