17歳のわたしはいつも寂しい。誰と居ても寂しい。これは大問題だ、結構やばめの。ママに似て独りに耐えられない。だけど、パパに似てこの問題を無視して生きている。

友達は常にいて、部活にだって入っているのに。この高校に入ったのも中学からの縁を絶対切りたくなかったから。でも、みんなの事を寂しさを埋める為の道具って考えないのは友達だからかな。あーあ、誰か寂しさを埋めてくれる人が欲しいな。彼氏?セフレ?体目当てでもなんでも良いし、嘘でもいいから好きだよ、ここにいて!って言われたい。究極誰でもいいけど、そんな甘い言葉、しょっちゅう貰える訳ないか。

寂しい時は小説を読む。昔からの習慣だし今もそうだ。新学期の教室には運が悪いことに友達は誰もいなかったから、また新しく作り直しだ。ちらちらスマホを見ても誰からもメッセージは来ていなくて、逆に前のクラスの友達にたくさんメッセージやスタンプを送り付けておいた。画面を起動するのも5回目、もう諦めて本を読むに至ったのだ。

さっきから物凄い視線を感じるけれどなんだろう。殺意かなってくらい強い。隣の席のくろがね君だ。背が高くて、痩せた体に特徴のない顔。あとなんだろう。全然知らないからなあ。ちらりと目を向けるとびゅんってそっぽを向いた。思わず笑ってしまった。それと同時にこれは友達作りチャンスだ!と思ってわたしは彼に話しかけた。

「どうしたの?わたし、なんかついてる?」

「え!全然大丈夫だよ」

「めちゃくちゃ見てたじゃん」

「いやいや、」

黒鉄君は何か言いかけて、それを飲み込んだ。不自然だったかなってわたしが焦っていると、ごく普通のなんでもない話を始めた。その様子が面白くてわたしはちょくちょく彼に話しかけるようになった。

わたしのこと嫌いじゃないんだ。安心した。友達って程じゃないけどよく話せる子ができてわたしは嬉しかった。授業中もしょっちゅう喋って先生に怒られたりした。

黒鉄君から訳の分からない提案をされたのは、新しい友達もそこそこ増えてきた頃だった。

「みやびさんの髪を触らせて欲しいんだ」

なんで、とポロリと呟いてしまった。

「君はかわいいから。綺麗だから。」

ますます意味が分からない。

「誰にも言わないで欲しいけれどお願いなんだ」

「うーん…」

そうだ。誰にも秘密なら、髪を触らせる所から始まるのなら。

「じゃあさあ黒鉄君」

恐る恐ると言った目でこちらを静かに見つめる黒鉄君。新学期より少しガタイが良くなったように見える。そう、この子なら。この人なら。

「わたしの彼氏になってくれるなら、いいよ」