「そーだ!名前なんて言うの?私は紗良!真城紗良!「紗良」って呼んで!」
真城紗良(ましろさら)と名乗る女は、ニカッと歯を見せて笑う。
「俺は……零。」
「レイ!いい名前だね!!じゃーさっそく秘密基地へ案内したげる!!」
紗良という女は、俺の腕を引っ張りつかつかと歩き始めた。
俺が死ぬために足を運んできた道を、この女は俺を連れて戻るように進む。
屋上から階段を下り、ビルを後にする。
変な気分だ。
俺はもう、この道を歩くつもりはなかったのに。
そもそも、もう居なくなる予定だったのに。
この女のわがままに、つい乗ってきてしまった。
俺はこのまま、どうなるんだ。
“どこ”へ行くんだ。

