「私のことはなんて呼んでもいいわよ♪あ、ちなみに私の名前は優子です♪「ゆうこ」って呼んでくれてもいいし、なんなら「お母さん」でもいいわよ♡」
あ、出会った時の紗良の母親だ。
真剣に話す時の紗良の母親は、説得力があって、はじめの時のようにふわふわした感じが嘘のようになくなっていた。
それが今は、またふわふわ感が戻りつつある。
これは、“真剣な話”が終わる合図でもあるようだった。
「あ、いや、じゃあ……ゆ、「ゆーこさん」……で。」
「ふふっ♪いいわよ♪これからよろしくね、レイくん♪」
にこっと綺麗な笑みを見せてくれる優子さん。
「…………紗良といい、……ゆーこさんといい……変な人たちだ」
本当に、変な人たちだ。
俺みたいなやつを、「ここに居てもいい」なんて。
「何言ってるの、あなたもじゅうぶん「変な人」よ!」
「……え」
「知らない人の家に無防備に転がり込むなんて、それこそ私たちに何されるかわからないのに!」
「…………あ、そこまでは、考えてなかったです……」
「あなたも、紗良を信用したんでしょう?お互い様ね!♪」
「…………」
しん……よう……。
たしかに、「紗良なら」って、思った。
それは、「信用」と同じなのだろうか。
優子さんや紗良の父親が、紗良を信用するように、俺も、紗良を信用したんだろうか。
不思議だ。
本当に。
俺の硬い心に……紗良はいっぺんにぶつかってきて、破壊した。
だから俺は今ここに居て、「ここに居たい」と思うのかもしれない。
「そう……ですね」
“お互い様”
そうだな、俺も
変な奴だ。
話し込んで冷めてしまった紅茶を、コクリと一口飲む。
温かくはないはずなのに、なぜかその紅茶を飲むと、
心が……あたたまった。

