「…………居ても、いいんですか。」
俺の口からは、こぼれるようにそう言葉が流れ落ちた。
「レイくんが、「ここに居たい」って思ってくれるなら、私たちは大歓迎!」
「……でも俺……何もできないし」
「そうねぇ、じゃあ、荷物を持ってもらおうかしら」
「荷物?」
紗良の母親は、ニコッと笑みを見せて提案を出す。
「そう。紗良が背負っている荷物を、半分持ってあげて。そして、私たちにも、レイくんの背負う荷物を半分持たせて。支え合うの。家族になるんなら、そうやって支え合わなくちゃっ、ね!」
ああ。
そうか。
俺に、役目をくれるっていうのか。
紗良の抱える暗いものを、俺が半分持つ。
紗良の心を、少しでも軽くするために。
そして、俺の心を軽くするために、この人たちは、俺の抱える暗いものを、半分持ってくれるっていうのか。
「…………俺に、できるかな」
「できるわよ。レイくんは誰かの心の痛み、わかる子でしょう?」
できるのなら
できるのなら、俺は誰かの心の痛みに寄り添いたい。
紗良の心の痛みに…………寄り添いたい。
俺はまだまだ弱い。
ちゃんと、誰かを守れるように、強くなりたい。
紗良の心を、守りたい。
「…………俺、紗良のこと、守りたいです。」
「ふふっじゃあ、契約成立ね。これからは、出ていく時は「いってきます」、帰ってくる時は「ただいま」よ?血が繋がってなくたって、心が繋がっていれば、家族になれるんだから。気遣いはなしね!」
不思議だ。
紗良の母親の言葉は、自然と俺の何かを揺るがせる。
今まで冷えきっていた心が、少しずつ、緩んでく。
あたたまっていく。
俺の心を見透かすように、欲しかった言葉を重ねてくる。
受け入れてもらえたことが、受け止めてもらえたことが、こんなにも嬉しいなんて。
「ここに居てもいいんだよ」と、笑顔で迎え入れてくれることが、こんなにも、あたたかいなんて。
俺は知らなかった。
「……ありがとう……ございます……」
震えた声で
泣きそうな声で
俺は精一杯に、そう言った。

