「よいしょっと!」
紗良が俺の隣にごろんと寝転び、布団をバサッとかぶった。
俺は無言で、とりあえず同じように寝る体勢をとる。
枕に頭をやるも、まだ布団はかぶってはいないが。
「ね!何話す!?こういう時って、恋バナとかかな!?」
紗良から、ルンルンとした気分が溢れ出していた。
「なんで恋バナ?」
「夜だから!友達と寝る時って、布団に入りながら恋バナするんだって!」
「どこ情報」
「ネット!」
「ネット……」
この様子だと、紗良は友達の家に泊まるとか、友達が家に泊まりに来るとか、そういうのがなさそうだった。
まぁ、俺もないけど……。
「私ね!こういうの夢だったの!誰かと、お互いが知らない話をしたり聞いたり、楽しそうだなって思ってたの!」
「……ふぅん」
「だからね!今日はいっぱい話したいなって…………」
突然、言葉が途切れた。
上を向いていた俺は紗良の方へ視線をやると、紗良は…………寝ていた。
スースーと寝息を立てて。
ま、マイペースだな……。
…………俺は、何してんだろ。
眠気は来ず、目はギンギンに冴えている。
隣には紗良という女の子がいて、無防備に寝ている。
俺は、なんでそんなに信用されてんだろ。
いつも邪魔者だったのに。
いつも必要のない人間だったのに。
いつも冷たい目で見られて、冷たく扱われていたのに。
なんで紗良は……こんなに安心した顔で、俺の隣でぐっすり寝れんだろ。
俺には、わかんねぇよ。

