ガシャン!!!
「……えっ……?」
柵が強く打ち付けられるような音とともに、俺の身体はがっしりと“何か”がしがみつくように掴んでいた。
ガシャン!!!
また、柵が強く打ち付けられる音。
今度は、俺の身体が柵に吸い寄せられたのだ。
「…………なんっ…………」
ふっと視線を下に向けると、胸部あたりに誰かの腕が見えた。
がっしりと、俺の身体を包み込むように掴んだ細い腕。
空中に投げ出した足は、地面へと戻される。
「あっ……ぶない!もうちょっとで落ちるところだったよ?」
背中から聞こえてきたのは、聞き覚えのない女の声。
バッと後ろを振り向くと、茶色いストレートの髪をなびかしながら、目をまんまるくしてきょとんと立っている女がいた。
「……誰。」
素っ気なく聞く俺の答えを無視し、今度は俺の腕をガシッと強く掴んでくる女。
「そこ!危ないからこっち来て!」
「は?いいんだよ。ほっとけ」
「だめ!さっきも落ちかけてたでしょ!いくら屋上から見る景色が綺麗だからって、そこまで身を乗り出しちゃ足滑らせて落ちちゃうよーーー!!」
……この女、ふざけてんのか?
ぐいーっと服の袖を引っ張る女に、俺はまた素っ気なく、そして強く言葉を言い放った。
「わざとやってんだよ!俺はこっから飛び降りて死ぬんだよ!見てわかんねぇのかよ!?だからほっとけって言ってんだよ!!」
「…………どして死ぬの?」
また、きょとんとした目で女は聞く。
「……なんでって……もうこの世界が嫌だからだよ」
「どして嫌なの?」
「なんでもいいだろ」
「何が嫌なの?」
「…………誰にも必要とされてない俺なんか、居なくなった方がいいんだよ」
ぼそっとつぶやくように言った言葉。
何、こんな見知らぬ女に真剣に話してんだ俺。
はっ、と我に返り、掴まれている腕を振り払う。

