だけど母親は、なぜか父親の遺影を一日中眺めるようになっていた。
ただただ、ずっと。
ずっと、見ていたんだ。
それから数日が経って、朝、目を覚ましリビングに行くと、母親は首を吊って死んでいた。
自殺したんだ。
わけのわからない状況を目の当たりにして、俺は崩れ落ちた。
ふと母親の手元に視線をやると、何か紙のようなものをぐしゃりと握りしめていた。
恐る恐る母親の手からその紙を取り、見てみると、中に何か書かれてあった。
ゆっくりと開いてみると、そこには、父親に宛てた手紙と思われる文字が、力のない字で書かれていたんだ。
『いま、いくね』
そう、書かれていた。

