「ね、もう、あんなことしないでね」
ふと、紗良が俺に言う。
「え?」
「屋上から、死のうとしてたの」
「……あぁ……」
「自分は、“死神”だって言ってた。あれ……どういうことなの?あんなところにいたのも、理由があったんでしょ。」
「…………まぁ、そうだな」
「言いたくなかったら、いいんだけどね!でも、一人で抱え込んでほしくないなって、思ったから」
紗良の第一印象は、「ただの脳天気な馬鹿なヤツ」ってイメージだった。
ヘラヘラして何も考えてなさそうな、言ってしまえば悩みのない幸せそうなヤツ。
……でも、全く違った。
こいつはこいつなりにいっぱい考えて、いっぱい悩んでた。
きっと俺のことを屋上で引き止めたのも、全てを察知したうえでの行動だったんだ。
そして今、また俺のことを考えてくれようとしている。
“何か”があったことを察知して、俺の背負っているものを「降ろしていいんだよ」とでも言うように、真剣に、向き合ってくれている。
紗良は、話してくれた。
俺も……話していいのだろうか。
「…………俺は、両親を…………殺した。」