「俺も…………逃げてきたんだ。嫌な、ことから…………。」
ふと、そうつぶやくように言っていた。
すると紗良は、またにこりと笑い、こう言ったんだ。
「じゃあ、一緒だね。」
と。
俺だけじゃなかった。
俺だけだと思っていた。
ひとりじゃ…………なかった。
初めて会った奴の話なんか聞いて、何が変わったって言うんだって、周りは言うかもしれない。
だけど俺の心は、確実に、ほんの少しだけだけど、何かが変わった。
“孤独”だって、思ってた。
でも、違う。
こいつも、“孤独”から抜け出すために必死にもがいていた。
俺も、同じだった。

