僕を拾った彼女。




「改めまして!私の名前は真城紗良です!14歳の中学二年生です!」




ブイの文字を作るように、俺にピースサインを送る紗良。




14歳って、俺と同い年じゃねぇか。




「では、さっそくだけど本題に入ります!」




紗良はにこりと笑みを作る。




なぜそんなに楽しそうにできるんだ。

今からお前は、自分の不登校話をするんだろ?




「中1の途中までは、学校行けてたんだけどね、いじめられちゃって。途中からは、ずーっと学校行ってないの。」


「いじめって……」


「ん〜簡単に言うと孤立しちゃってね。学校嫌になっちゃって。だから学校行くのやめたの!だから今は大丈夫!私のことをいじめる人もいなくなったし、毎日楽しいんだ!」




大丈夫って……毎日楽しいって……そんなこと……。




「そんな簡単な問題じゃ、ねぇんじゃねぇの?」


「え?」


「なんでそんな、笑ってられんだよ?学校は別に、嫌いじゃねぇんだろ?それを他人に邪魔されて……悔しくないのかよ?本当に、楽しいのかよ?」




紗良は、きょとんとした目で俺を見ていた。


そして、そっと口を開いた。




「ある人がね、小学生のとき、私に言ったの。「きみが笑うと、周りが笑顔になるよ」って。

私がいじめられて家に引きこもっているせいで……お父さんとお母さん、いつも暗い顔してたんだ。

私に向ける笑顔も……どことなくぎこちなくて。

いつも、悲しそうだった。

私のせいだって、毎日自分を責めてた。

だけどある人のその言葉で、私の中の、何かが変わったの。

家でね、笑うようにしたんだ。

はじめは変な感じだったと思うけど……だんだんね、普通に笑えるようになったの。

するとね、お父さんとお母さんも、自然と笑うようになってくれた。

私のせいで暗かった家の中は、前みたいに、明るくなった。

だからね、どんな時でも笑うようにしたんだ!

そしたら、悲しい顔をしてる時よりも、心が軽くなったの。

私が何かしたところで、何も変わらないと思ってたけど……少なくとも私の世界は変わった。

学校に行けなくても、自分の世界が明るければ、私の周りが明るければ……それが私にとって、私の居場所なの。

私の居場所を守るためには、自分自身を守らないとダメだって思ったの。

お父さんとお母さんの笑顔を守るためにも、私が笑顔でないといけない。

だから、自分が傷つく場所には行かない。

今は、それがいいの。

それしか、ないの。」