「でしょ!?私、大好きなんだ!お母さんの作ってくれるお菓子♪とーーっても美味しいの♪」
紗良が笑顔になるのもわかる。
こんなに美味しいものを食べれば、紗良のように幸せそうな表情をできる人はたくさんいるだろう。
だけど俺には、その表情ができない。
……どう笑みを作るのか、忘れてしまった。
だから、俺の言う言葉のひとつひとつに、信憑性など全くないだろう。
美味しくても、ただ機械のように「おいしい」と言うだけで、自分でさえ感情が相手に伝わるようには思えない。
こんなに優しくて暖かい空間、俺には場違いのような気がする。
だけどとても、居心地が良かったんだ。

