「これ、お母さんが作ったドーナツ!」
今度はドーナツに指をさし、「すごいでしょ?」とでも言うように紗良は自慢げに笑った。
確かに、お店で売ってるドーナツと言われても全く不自然ではないくらい、綺麗な形に美味しそうな見た目。
ドーナツの上にはチョコがかかっていたり、ピュレが乗せられていたり、とても高級そうだ。
手作りしたとは思えないくらい、豪華で可愛らしい出で立ちだ。
紗良がチョコのドーナツに手を伸ばしたあと、「レイも食べよ!」と言われ、しぶしぶドーナツに手を伸ばす。
手作りの物を口にするのは、何年ぶりだろうか。
いつからだろう。
しばらく手作りのものなんて、食べていない気がする。
俺はシュガーのかかった普通のドーナツを手に取り、ひと口食べた。
口の中で広がる、シュガーの甘み。
ふわっとしていて、あっさりとした生地。
俺は、ひと口かじったそのドーナツを見つめ、「……うまい。」と、また自然と言葉がこぼれていた。

