その日から久野くんと口を聞くことはなくなった。



‥というか、正直避けられるようになった。



会話をするどころか教室ですれ違っても目をそらされるようになった。



久野くんの視線の先に



私はいない。



‥ちょっと前までベットの上にいる時だけでもその瞳に映っているのは私だったはずなのに。



知り合ってからまだそんなに時間も経ってないしそんなに一緒にいた時間が長かったわけじゃないのに


いろんなことが頭の中で繰り返し思い出される。



そして思い出すたびに私は苦しくなるんだ。



そんな私を見かねたのか、6月も終わろうとするある日、夏実が突然言った。


「‥ねえ瑠美、久野くんとなんかあった?」


やっぱりいきなり話さなくなったのは周りから見ても変だったらしい。


「…うん‥ちょっと色々あって…

目も合わせてもらえなくなっちゃった。」

色々がこんなに複雑なことだとは夏実もさすがに思っていないだろう。


「…瑠美‥


ずっと聞いていいのか分かんなかったんだけどさ、瑠美は久野くんのこと‥好き?」



不意をつかれて動揺したが、こんな状態になってるのに好きって認めたらすごく自分が惨めな気がして、


「‥なんで?」

と短くそれだけ言った。



「…なんか瑠美は気づいてないのかもしれないけどね、周りから見ると久野くんと話してる時の瑠美ってめちゃくちゃ可愛いの。

恋する乙女って感じで。もう好きっていうのが顔から仕草から何まで全部に出てるもん」





…そんな風に自分が見えてるなんて知らなかった。





そんな風に私の気持ちが出ちゃってたから、久野くんもめんどくさくなって嫌になったのかな‥?



「…うん‥好きだよ‥


‥大好き…」



ずっとほんとは言いたかった。



でも結局本人は一回も言えなかったや。



そう思うと涙が止まらなくなって、すぐに視界がぼやけて夏実の顔さえまともに見れなくなった。