ーー高校1年春ーー


「おはっ!」

後ろから肩をポンっとされ振り返ると、そこにはもう見飽きたアイツの顔がある。

「..もうーっ、りゅうちゃん!!いきなりびっくりさせないでよ!」

「へへっそんな怒んなよ〜笑」

そう言って悪びれずに笑っているのは、幼馴染のりゅうちゃんこと西島竜之介。一つ年上の高校2年生。

「あってか、るみなんで今日先行ったんだよー!」

そして私は小松瑠美、15歳。今日から高校生。

「りゅうちゃんがちゃんと起きないのが悪いんでしょ!遅刻魔に合わせてたら私まで入学式に遅刻しちゃうでしょ!」

「わりー。明日から起きるから許して!なっ!」

まるで捨てられた犬かのように目を潤ませてこっちを見てくるりゅうちゃん。

「もうそんな顔したって私には効かないんだからね〜。‥‥まあ今日だけだよ?‥次遅れたらもう一緒に学校行くのやめるからね!」

そういうと屈託もない笑顔で

「さすがるみ!!」

なんて褒めるんだから、本当に都合がいいったらありゃしない。

今までは道の途中で右に曲がって、中学校に行っていた私だが、今日からはりゅうちゃんと同じ学校に行くので曲がる必要がないと思うとなんだか新鮮な気持ちになった。

片道15分ほどかかる道のりも気心の知れたりゅうちゃんと話してたらあっという間だった。

「もし誰かに喧嘩売られたりしたらちゃんと俺に言えよ!すぐ助けに行ってやるから!」

「大丈夫だよ〜心配しすぎだって!そもそも私人見知りしてあんまり他の人とは話せないし、そんな目立つことしないから!

‥それにりゅうちゃん華奢だから‥返り討ちされそうで呼べないよ笑笑」

「いやっ!それは‥これからもっと身長だって伸びてガタイ良くなるし、春休みだって3センチも伸びたし!」

りゅうちゃんはいわゆる甘い顔をしていて、ぱっちり二重の目に長いまつ毛、高い鼻筋に白く透き通る肌、整ってはいるのだが、殴ったら折れそうな薄い体に低めの身長で正直なところあまり男らしさはないように見える。

本人も気にしてるからあまり言わないようにはしてるんだけどね、、

「わーかった!じゃあなんかあったら最初にりゅうちゃんに話すから、ね?」

そういうとさすがのりゅうちゃんも黙った。

「‥うん、あともし友達出来なかったら俺のところに泣きつきに来てもいいからな?」

そう言ってニヤッと笑う。

本人には言えないけどこんなに優しい幼馴染がいて良かったなーって実は何回も救われてるんだよ?

‥ちょっとアホなとこもあるけどね笑