エレベーターの中でガチガチになってる私を見て、久野くんは

「別に手出したりしないし、お前そんな状況じゃどこにも行けないだろ?

だから落ち着くまで話聞いてやるだけだから、あんま変に緊張すんな」

なんて言って、いつものように片手を私の頭の上にポンっとのせた。


「し、知ってるよ‥」

「ならいいけどな〜」なんてニヤッとする久野くんはたぶん経験のない私をみて、からかってる。


悔しいけど、でもほんとに経験がないし、ラブホなんて来たこともないから言い返せない、、。


部屋に入ってベッドに座るとさっそく久野くんは口を開いた。

「‥で、1人であんなとこにいたけどどうしたの?」

「‥その‥家でいろいろあって‥」

もごもごする私に、

「瑠美が言いたくないなら無理に言わなくてもいいけど、

話してスッキリするなら聞いてやるから」



こんな時だけ優しくするのはほんとにずるいよ‥

なんて思ったら、また涙が止まらなくなって。

「‥ズルイよ‥

どうせそうやって優しいこと言って女の子落とすんでしょ‥」

なんて最強に可愛くないことを言ってしまった。


「は!?おれそんな優しいこと言ってないだろ!?」

声を荒げながら、私の涙を拭いてくれる親指は優しくて、

「うちね‥うち‥お母さんしかいないんだけどね‥

お母さんいつもお客さん家に連れて来て、ああいうことばっかりしてて、

‥昔から私のことはちっとも構ってくれなくて、‥‥約束も覚えてないし‥


‥いてもいなくても変わらないし‥‥


私なんか生まれてこなきゃよかったんじゃないかって‥‥」


思ってることを全部吐き出してしまった。



それでもまだ止まらなくて、泣きながら、声にならない声で、


今までの経緯を全部説明した。


その間久野くんは「‥うん‥。」「そっか‥」しか言わなかったけど、


今まで大変だっただろ、頑張ったな、というようにずっと背中をさすってくれていた。