代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉




「べっぴんさんだね〜、羨ましいよ美人秘書がついてて」と言われても変わらぬ対応を心がけ、とにかく顔と名前を覚えるのに必死だった。



円卓を囲みビッフェ方式の式典パーティーとなっているが食べる時間なんてあるもんじゃない。
常に副社長の周りには人が集まり気が抜けない状態だ。



「紗和ちゃん?うわ、また綺麗になってる!」



とうとう現れた堀越社長。
握手する手がいやらしい。
他の会社の役員と話をしていた副社長が気付いて手を離させる。



「副社長、お話を」と戻すも私の腰に手を当てて自分の方へ寄せる。
堀越社長からは守られたけど。
いや、大胆過ぎ……こっちが赤面。
周りの目も気にしてよ。
ムスッとした堀越社長に頭を下げるしか出来ない。



ほとぼりが冷めたらそっと腰の手を離した。
そしたら次は何で副社長の方がムスッとするのよ。
この2人……面倒くさ過ぎる。




来賓の挨拶が終わり、いよいよ役員挨拶の順番がやってくる。
隣に立ち、壇上する何人にも拍手を送る。



「腹減った」



そっと顔が近付き耳元で言われる。



「挨拶が終われば何か取ってきます」と小声で返す。
再び顔が近付いて……
「お前もその時食っとけよ」って。
実は私もお腹ペコペコだったから嬉しくてつい満面の笑みを返してしまった。


壇上に上がった副社長は3割増しに格好良く見える。
やっぱり周りもウットリさせるほど容姿端麗なんだよね。
渡した挨拶文を自分の言葉に変えて順番を変えたり工夫して堂々とスピーチしていた。