いつもと違う格好にぎこちない2人。
会話もないから緊張感が走る。
黙ったまま隣に座る居心地の悪さ。
ホテルに着いて初めて知った。
え、これ映画のハリウッドスターがレッドカーペット歩く前に車から降りるシーンじゃん………
複数のカメラが待ち構えてる。
ドアが開いて副社長が降りていく。
続いて降りたらシャッターの嵐で固まる私。
慣れたように片腕を出しエスコートする副社長についていくのがやっとだ。
「これどういう状況ですか?」
「演出だよ、気分上がるだろ?ほら、とにかく笑顔で写真に映れ」
そう言いながら周囲に手を振っている。
芸能人でもなければスターでもないのにと若干引きつつ、日本人特有の合わせる力で何とかホテルに入るまでの距離を乗り越えた。
と言っても、めっちゃぎこちない笑顔で会釈してただけ。
「どこかに使われるんですか?今の写真」
「ん…社内通信には載るだろうな」
へ〜そうなんだ、とホッした。
他の人達も同じように撮られてる。
館内を案内しながら初めての私に色々説明してくれたりして有り難いけど、ずっと手は組んで歩くのね?
周りもそうやってて慣れない私はてんてこ舞いだ。
会場に入るともうすでにたくさんの人が居て入り口でグラスに入ったシャンパンを受け取る。
そのまま奥へ進んでいくと副社長自身がVIPな為、色んな人から挨拶の声がかかる。
ほとんど初めましての方達なので秘書が名刺交換する。
前に行けば行くほどVIPらしい。

