滞りなく時間は過ぎ、式典パーティー当日。
本社自体も定時を早め、会場準備にあたる。
車で数分の場所で押さえてあるホテルにて式を執り行う予定だ。
それぞれが会場に向かう時刻。
副社長室をノックする。
「副社長、そろそろお時間で…」
夕日に照らされ逆光の中に居る副社長が振り返った時、言葉にならないくらい衝撃を受けた。
タキシードに身を包み髪も格好良くセットしてるから思わず見惚れてしまうほどの容姿。
「どうした?変か?」
フリーズしていた私は我に返る。
「いえ、似合ってます」
「そうか?よし、急ごう。次は深山の時間だ」
副社長自ら予約を入れてくれていたサロンにヘアメイクをお願いしてある。
何もかも至れり尽くせりで恐縮だけど「俺がしたいんだよ」とか言われたら何も言えないでいる。
ゴージャスに巻かれながら同時進行でネイルも。
あっという間にセットし終わり着替えに移る。
全てを終えて目の前に現れた時の副社長の顔が完全に止まっていて少し不安を覚えた。
「え……変ですか?」
恥ずかしくて目見れない。
前まで来て手を掴まれ顔を上げた。
「行こう」とそのまま引かれ、店を出たら車のドアを開けてエスコートしてくれる副社長に一瞬戸惑う。
え、しかもリムジン!?
いつの間に!?
道行く人に見られながらも手を差し伸べて微笑む姿は紳士そのものだ。
タキシードとドレス姿なんだもん、目立っちゃうよね。
そっと手を重ねリムジンに乗り込んだ。

