代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉




目で訴えてくる橘社長に僅かに首を振る。
絶対にネタバラシしちゃ駄目。
今までの苦労が水の泡になる。



「私は…この会社が好きです、ここで…頑張りたいです」



肩を持つ副社長の手に力がこもる。
真っすぐな眼差しに動けないのは何故なのか。



「今回のプロジェクトが成功すれば、おのずとこの会社は大きくなるし君も管理職クラスだ。でも君の居るべき場所はここじゃない。もっと違う景色を見るべきだ…ここじゃなくて、俺の隣で!」




「………はい?」




最後の一行、聞こえなかった事にしていいですか…?



この人はとても優秀で仕事も出来て…この若さで世界トップシェアを誇るスポーツメーカーHIDAKAの2TOPまで上り詰めた人だよね…?
真面目な顔をして、自分が一体何を言っているのかちゃんと理解出来てるんでしょうか…?



暴走した副社長を止めるのかと思いきや秘書も「お試し期間などどうでしょうか?深山様にとってもとても勉強になると思います」とか言って乗り気だし!?
どうなっとんや、この会社……



切り口を探りながら途方に暮れたその時。



部屋の扉が勢いよく開き、靴の音を鳴らして入ってきた女性に皆、視線を奪われる。



「失礼します」



語尾にハートを付けたような口調でそう言う彼女は、チャコールグレーのファーコートに赤いタイトスカートという奇抜なファッションでバッチリメイク。
当然、橘社長とも顔見知りな訳で……