「いえ、そんな事……私にとってはどんな時でも副社長ですから。常にお仕え致します」
「副社長という名の…クライアントだから?」
「…勿論です」
そこ、満面の笑みで言うなよな。
でもまぁ、難しい事考えるのはよそう。
秘書としてそばに居てくれるならそれでいいや。
「じゃあクライアントから絶対的な指示ひとつ」
「はい、何なりと」
「秘書としてずっと俺のそばに居ろ」
「え……あ、はい」
「あ?声が小さい」
「はい…!わかりました!」
「宜しい。ほら行くぞ?深山秘書」
「…はい!」
助手席に乗せたお前は早速パソコンでスケジュールを確認して伝えてくれる。
いつも通りの朝。
違ってると言えば同じ車内に居るって事だけだが。
「あっ!」と急にこっちを見て声を上げるからビックリした。
「ちょっとヤバくないですか?2人で出勤するの…誰かに見られたりしたら…」
動揺し過ぎだろ。
一人で喋って一人でテンパってるから可笑しかった。
「え、何?そうなるってわからず俺ん家来たの?」
「いや、半分わかってました。でも心配の方が勝っちゃって……」
「半分わかってるって何だよ…アハハ。でも心配してくれたんだ?ほら、お前だってそうやって期待する事言ったりするから俺も勘違いするんじゃんか」
「はい……すみません。気を付けます」
珍しくシュンとしてそれはそれで可愛いからまた自分の首を絞める結果となる。
やっぱりお前はズルい女だ。
その女にとことん惚れてる俺はバカな男か?

