「本当に…紗和の気持ちはない?」
「え……?」
「俺に対する気持ちは…ないんだな?」
その揺れる瞳に1ミリも可能性はないのか?
あれだけ期待させるような事しておいて……
昨日も今日だってここに居るじゃんか……
今も……嫌ならこの手振り解けよ…!
何で……お前が泣きそうになってんの?
「目を逸らすな、俺を見ろよ」
「痛い…です……」
手を離したら背を向けてしまった。
このまま嫌われていくのかと思うと急に怖くなる。
抱きしめたい気持ちを必死で抑え……
「わかったよ……お前にも立場がある事くらい理解すべきだった、悪かった……でも、嫌ったりすんなよな?秘書降りたりしたら……俺はもう二度と這い上がれない、踏ん張れねぇんだ」
自分が女々しくて嫌になる。
普段偉そうな顔しときながらお前の前だとこんなに情けねぇ。
笑うなら笑えや。
嫌われるよりよっぽどマシだ。
もう格好悪いとか言ってられねぇから。
ゆっくり振り返る紗和は再び真っすぐ俺を捕らえる。
何だよ、ケロッとしやがって。
「はい、わかりました。秘書は続けます、今後も宜しくお願いします」
「本当に?」
「はい」
「今まで通り?」
「はい」
やっと笑ってくれた事に安堵して「よかったぁ〜」と抱きしめたら「そういう事ですっ」と体を押され厳重に注意される。
はい、わかりました……
「俺の事、軽蔑した…?」

