「さぁ、行きましょう」
その笑顔、いつになったら独占出来る……?
代行なんかさせねぇでずっとそばに居る日はいつになったら……
「今夜も来る?」
行ってしまう背に問いかけた。
困らせてばかりだな、俺は。
また公私混同するなって言うんだろ?
悪かったな、物分りの悪い男で。
「またお金で私を買うんですか?」
「え……?」
無機質な背中がそう語る。
「お金さえ払えば…私が何でも言う事聞くって思ってます?」
「あ、いや……」
「今度は身の回りの世話、家事代行…ですか?レンタル彼女じゃなくてもミニパックで話し相手や相談にものれますよ?」
何でそんな冷たく言うんだよ……
振り返る紗和は真っすぐ俺を見て……
「そういう事でしたら私ではなく直接会社を通して頂けますか?そこで新たな契約を結んでください」
思わず紗和の腕を掴む。
「それはつまり……俺達はお金でしか繋がれないのか?」
悲しすぎて一番口にはしたくない質問だった。
頭の隅ではわかっていても僅かな期待が俺を突き動かしていたから。
「最初からその契約のはずです。クライアントの指示にお金で動くのが便利屋です、全力で務めます。でも心までは動かないって事…念頭に置いてくださいね?」
今までの紗和は全部……演技?
当たり前の事だけど契約を交わした仲だった。
掴んでいた手を持ち上げる。

