「お疲れ様です、深山です。はい、大丈夫です。今日ですか?えーっと確か……船木さんのデータならあると思うので…っ!?!?」




同僚と通話している紗和を後ろからハグした。
ビックリして俺を見るも通話相手にバレないように話を続ける。
そうするだろうと読んでいた俺は抱きしめる腕に力が入る。



「ちょっと待ってくださいね?」と話を中断して、小さな声で俺に「やめてよ」ってそんな色っぽい仕草で逆にスイッチ入っちゃうってわかんないの?
耳まで真っ赤なお前はいつもより俺を暴走させる。



動揺してんの?
敬語じゃなくなってる。
会話もしどろもどろで……完全に意識してんじゃん。
俺、止まらなくなるよ?いいの?
そんな弱い力で抵抗してるつもりかよ。



「えっと、船木さんなら…何度か指名頂いてますけどもう当分行けないんで……はい、宜しくお伝えください…」



リビング中を移動しながら逃げる紗和を何度も抱き寄せる。
振り返って拒んでもその目は嫌がってないよな…?



「対戦中よく眠られるので私クシャミとかで起こしてました。あと将棋以外だとオセロとか…チェスの相手きゃっ…!!」



くっついて離れないでいたらソファーに倒れた2人。
仰向けの紗和とその上に乗っかる俺。
お互いフリーズして至近距離で見つめ合う。



携帯から「大丈夫?何かあった?」と通話相手の声が漏れている。
揺れる瞳に理性を保つ自信がない。
そしてまたお前は俺にブレーキをかけてくる。