「え……?」
この真っすぐな瞳……苦手かも。
吸い込まれそうで肩に力が入る。
「今後、彼女を我が社で預からせて頂けませんか?」
橘社長に向かってそう話す横顔。
高い鼻筋とシャープな輪郭に見惚れてしまった訳じゃない。
依頼達成した事で安堵に満ちていた右脳と左脳に突如電流が走る。
「えっ…!?」
思わず二度見してしまう私と固まる橘社長。
怯まぬ態度の副社長に隣の秘書もタジタジ。
え…?どういうこと!?
この人は一体何を言っているの!?
「失礼だとは重々承知ですが、彼女を我が社にください」
丁寧に頭を下げられ橘社長もアタフタしている。
チラリと私を見て助けを求められても解決策が見当たらない。
こんな事は前代未聞で初めてのケースだ。
「それはその…つまり、引き抜きという事でしょうか?」
恐る恐る橘社長が聞くと顔を上げて「そういう事になります」とか言っちゃってる。
そんな自信満々に言われてもどう対応するのよ。
ダメだ……これは姉に相談せねば!!
クラクラする頭を抱え失礼しようとするも両肩を掴まれまたあの美顔が目の前に阻む。
「深山さんだったよね?2年目なのにあのプレゼンは素晴らしかった。是非うちで働いて欲しい」
「いや、あの……私は…」
一度に色々と起こり過ぎて頭がパンクしそう。
これは、私の一存では決められない……
でも何とか切り抜けないと。

