見上げた顔は完璧に近いほど容姿端麗で黒い瞳に映れば…一瞬、時が止まる。
「あ…失礼」と手を離した副社長は橘建設の社長に向かって意を決したように話し出した。



「橘社長、単刀直入に申し上げます!開発チームにぜひ参加して体制を整えて頂きたい。退職した者は出来る限りこちらで呼び戻すよう手配しましょう、プレゼン内容通り実行してください!今回のプロジェクトに力を貸して頂けますか?」



あまりにも早口で気迫に押しつぶされそうな橘社長と私はびっくりしてすぐに声が出ずに居た。
同席した秘書の方が見兼ねて補足する。



「電話で通達するつもりでしたが副社長がぜひ視察も兼ねてとの事でしたので、突然お邪魔して申し訳ありません。古くからのお付き合いである橘建設さんの技術と信頼を買っての決断と致しました。コストばかり気にした他のプレゼンとは全く違っていて社長も橘建設さんにと即決されていました」




補足説明でようやく理解出来た橘社長は胸を撫で下ろしていた。
まずは人手不足を解消しスケジュール管理の徹底をとの事。
これが上手くいけば業績回復し会社全体が潤う事は間違いなし。



橘社長も興奮のあまり私に「ありがとう」と勢いよく握手を求めてきた。
良かった〜依頼内容達成!
ガッポリ稼げるぅ!!


「そこでなんですがっ!!」とまた声を張る副社長に視線を戻す。
まだ話は終わってなかったようだ。
思わず握手していた手を離して前を向く。
橘社長に話があるのだろうと俯いたら再び副社長は私の目の前に立った。