目的まではわからないそうだがプレゼンの件だとすれば私が居ないとマズイらしく至急向かえとの事。
しかし、私は今、おじいちゃんの将棋相手という代行中。
大きな屋敷を構えた中庭で楽しく将棋を指していたが、さっきから延々と考え込んでいるおじいちゃん。
「これ………完全に私の勝ちだね?おじいちゃん」
私、将棋負けた事ないの。
ごめんね?手加減しても勝っちゃって。
ていうかちょっと寝てたでしょ?
急いでるから行くね?また来るよー!と急いで車に乗り込む。
万が一に備えて橘建設のブルゾンは常に持ち歩いていた。
私服だけど上から羽織ればいいし髪も結んで眼鏡かけたらすぐ会社の人間になりきれる。
間一髪で副社長より早く橘建設へ到着。
胸を撫で下ろした社員達にいつも通りに作業して頂くのと、念の為私は金子さんと同期である設定を全員に再確認した。
急遽用意して頂いた私のデスク。
プレゼンした内容が入っているUSBメモリをパソコンに刺す。
もう一度復習しようと開いた時点で副社長が到着した。
社内に緊張感が走る。
一体何の目的で来たのか!?
来客用の部屋へ案内し、お茶を差し出す。
この前隣に居た秘書らしき人も一緒に来ている。
怪しまれないように下がるつもりがまたしてもやたら視線を感じていた。
そっと見ればやっぱり副社長と目が合う。
しかも不気味に微笑んでいる。
一礼して離れようとしたら副社長が立ち上がり「待って」と私の腕を掴んだ。

