代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉




「えっ…!まさかの、シックスパック!?」



男って単純なもので、褒めると最高のドヤ顔だよね。
単純だからこそ、複雑な作りの女には必要な生き物で惹かれていくのかも。



「こういうの、好き?」



自信たっぷりに聞く副社長は、もはや私の中では「可愛い」に属する。
触れながら思いきり恥ずかしそうに「…好き」と言ったらどう感じてくれるだろう。
その後指を絡めたら赤らむ頬を伏せた。



少しでも爪痕を残せたらそれで良い。
レンタル中である事を忘れさせるくらい、現実に戻った後もがき苦しんでくれたら………
なんて考える私は心が麻痺してる。



普通に街並みを歩いて、買い物を楽しんだり食べ歩いたり時にはゲームを本気でやってみたりして、まるで高校生のデートみたいだ。
懐かしさや忘れていたキラキラ感が一気に蘇ってくる。



立ち止まり遠くの海を眺めながら潮風が通り抜けていく。
そっと後ろから抱き寄せられても何の違和感もないほど距離は縮まっていた。
背中が温かくて心地良い。



「このまま時間が止まればいいのに」



耳元でそう聞こえたの。
今、全く同じ事を考えていた。
でもそれは伏せておく。
決して言えない。
クスッと笑って誤魔化した。



「俺、欲張りだから……やっぱり紗和の全部が欲しいって思っちゃう」



抱き寄せる力が強くなる。
だから歯止めをかけなきゃいけない。
振り返って見つめ合う。
真っすぐ過ぎる瞳に負けないように……