「戻すの早い」
すぐにニット帽をかぶって隠しちゃった。
クスクス笑ってたらふいに顔を覗いてきて目が合う。
「髪巻いてんじゃん」と降ろしてる髪に触れてニッコリ笑った。
雰囲気も違うけど…表情が普段より数倍優しいから何か別人とデートしてるみたい。
「行こうか」と自然に手を繋いでくるところはさすが慣れてる。
「ちょっと待ってください、今日は何て呼べばいいですか?」
「俺は紗和って呼ぶ」
「じゃあ私は…響也さん?それとも…響ちゃん?」
「今日は敬語なしにしたいから後者で」
「了解」
「そうだなぁ…設定としてはやっぱり付き合いたてのカップルだな」
「了解」
「初デートは渋々彼氏のスケボー見に来たって感じから始まる」
「渋々なんだ?アハハ」
デートコースは任せろと言われたので私からは一切口出ししない。
ただ100%俺を好きで居ろって意味でもてなしと言ったらしい。
わかりにくい……
大きな公園に入ると奥がスケボーパークになっていて、チラホラ練習している人達が居る。
へぇ〜スケボーとかする人なんだ?
「昔は3度の飯よりスケボーだったんだ。今は体が鈍ったり気分転換したい時とかにたまにする程度だけど」
「格好いいとこ見してね?」
「渋々見とけって」
優しい横顔を見せて行ってしまった。
ヘルメットをかぶり勢いよく滑っていく。
あれ?これ普通に上手いやつだ……
空中に浮いて回転させたり手すりの上をバランス良く滑ったりして、もう自由自在に操るプロの腕前じゃん。

