皆が注目する中。
恥ずかしそうに控えめに深山は言う。



「会議…再開してください。私が通訳します」




マジかよ………フランス語喋れるなんて聞いてねぇぞ。
どこまでデキる女なんだよ。
でも、本気で感謝した。
巨大プロジェクトが泡になって消えるところだったから……


通常より時間は押したが問題なく会議は終わり、話はまとまった。
早速、デスクに戻り議事録をまとめている深山の後ろに立つ。
普段なら立ち寄らない場所だから目立ってしまっているが、かなり集中しているからか俺に気付いてない。




知らせようとした他の社員にジェスチャーで制止させて様子を見る事にした。
腕組みしてしばし見つめる。
カチャカチャと素早いタイピングで凄まじい集中力だ。



コーヒーの入れ方を近くに居た社員に聞き、不慣れながらもカップに入れてそっと戻る。
周りの社員は気付かない深山にハラハラしている事だろうな。
まさかここで俺に後ろから見られてるなんてな。



人差し指を口に当て「シー」と周りにジェスチャーで伝えた後。
見えるようにコーヒーを差し出し「お疲れさま」と告げた。
真剣な横顔から見上げた時の驚きようといったら………



「副社長っ!?」ってすぐに立ち上がり動揺してる。
周りにクスクス笑われてまた真っ赤だぞ。
コーヒーに気付いてかなり謙遜してる。
驚き過ぎだろ。



「ちょっといいか?」



「あ……」とパソコンを見る。
「議事録あと3分ほどお待ち頂けますか?すぐに送ります」ってオイ、こっちは仕事の話じゃねぇんだよ。