浮かない顔のまま15時定刻に会議が始まる。
海外進出してから定期的に行う国際会議で、今回は初めてフランスでフランチャイズを試みる勝負となる会議だ。



これが成功すれば億の金が入る。
是が非でも成功させる為にある重要人物をフランスから呼び寄せていた。
少々気性が荒い人物らしいが傘下に入れると間違いなく有利になるキーパーソンだ。



深山も気合いを入れて準備してくれてる。
気持ち切り替えなきゃな。



「副社長…!」



会議に向かう廊下で呼び止められる。
目の前に来た深山が少し背伸びをして顔を近付けてきた。
あまりにも突然で、こんな場所で、全く動けなくなる体。
それでも意識するなと言うのか…?



伸びた手は肩に触れる。
綺麗な顔から目が離せない俺は近くでずっと見つめてしまう。
ニッコリ笑って何かを差し出す深山。



「やっぱり……肩にゴミが」



指でつまんで見せてくれていた。
サッとハンカチで包み「捨てておきますね」と下がる。
直立不動の俺に「急ぎましょう」だと?
こんな思わせぶりな事しやがって…



とことん……諦めさせないつもりだな?
この俺をもて遊ぶなんていい度胸じゃねぇか。
いいだろう、受けて立ってやる。
そっちがそのつもりならこっちだって………



「深山」



「はい」



「この会議が上手くまとまったら…」



耳元で続きを言ったら、瞬時に顔が赤く染まって「む、無理です」って焦ってる。
お前のそういうところ、可愛いよ。
もう少し虐めたくなる。
違反だなんて言うなよな?