「だから泣かないでくれ……悪かった、気を付けるから」



振り向けばきっとまた……すがるような瞳で私を見るに違いない。
だから安易に振り返れない。
きつく怒ったせいで私が泣いたと勘違いした副社長は素直に謝罪してきた。
意外過ぎる行動に正直戸惑う。



泣いて……ないんだけどな。
でも正直に言うのは止めておこう。
この際、涙も上手く利用するか。
副社長には良い薬かも。



「深山……」



「はい……」



「少しだけ、このままで居て良いか?」



なかなか解放してくれない副社長の甘い罠。
解けるはずなのに動けないのは何故…?
心が言う事を聞かずに「はい」と答えてしまう。



おそらくこれは違反行為………



私は……どんな理由をつけて目を伏せるのか。



まだ心が……知りたがっている。



だから私は……目を閉じて、



違反ではないと言い聞かせてしまう。



ブレーキ踏むのを忘れてしまう。



周りから見たら情緒不安定過ぎる副社長を……放っておけない自分にやがて気付くの。



もう私は………代行秘書失格だ………