身構えた体がクルッと180度回転して副社長に背を向ける形になった。
何故そうされたのかはすぐにはわからず、とりあえずハンカチで涙を拭ってみるけど原因はコンタクトレンズだと推測する。



上腕筋を両手で支えられながら後ろから自分の肩に副社長の頭が寄りかかってきた。
ここはびっくりするところだが、私にとってはレンズを外しゴミを除去する方が先決で、とにかく涙を止めたい想いが勝っている。



「悪い……ちょっと言い過ぎた。自分でもわかってる……こんな事…理不尽だって」



両手が降りたのでこっそり目薬をさす。



「感情もコントロールしなきゃなってちゃんとわかってる…上に立つ人間なら尚更だ…」



やっとお気付きになりましたか?
肩に温もりを感じながらも鼻をすすり天を仰ぐ。



「でもお前の事になるとますますコントロール出来ない……ダメだってわかっていながらどうしようもないくらい苛立つんだ……独占…したくなる」


背中越しに伝わる副社長の体温。
私はどうすれば……?
このまま聞いてればいいの……?



「だからといって嫌いにならないでくれ……」



押し出すようにまたあの弱々しい声。
近過ぎて耳元で言われてると勘違いしてしまいそうになる。
全部の意識が左肩に集中していて……



「お前に嫌われたら…立ち直れそうにない」



え………?
いくら何でもこれは……アウトでしょ。
気付いてないフリは、出来ないよね……?