通しでも見てもらってOK頂いたのでその勢いで本番行っちゃいます。



有名スポーツメーカーHIDAKAの新店舗開発でのプレゼンだから会場も大きい。
計8社からなる様々な塗装内容や費用、イメージに添ったプレゼンが行われていた。



橘建設の順番は寄りにも寄って一番最後。
ざっと見ただけでHIDAKAの関係者は40〜50人は居る。
その中で役員は10名ほど。
この方達の目に止まらないと依頼に反してしまう。
そうなれば報酬はグンと下がって発狂する姉の顔が浮かんだ。



降ろしていた髪をキュッと結んで眼鏡をかける。
自分でもわかる、目つきが変わる瞬間。
姉の影響を受けすぎているんだと思う。
この仕事を始めてから、やるからにはきっちり稼いで帰るがモットーになってしまった。



「次は橘建設のプレゼンテーションです」



資料を手に壇上へ上がる。
マイクを通して自己紹介したら、イチかバチかの社運をかけた勝負が繰り広げられるんだ。
今この時、選ばれし何でも屋の私が老舗建設業の未来を左右する。


予定していなかった質疑応答もノープロブレム。
なりきっている私は今のところ無敗の無敵なのだ。
臨機応変に機転を利かせて答えていく。
もしや橘建設の社員より堂々としてる!?



でも、開始直後からずっと目が合う人が居る。
関係者の中の一人、最後まで凝視してた人が。
隣に座る関係者に何か話してたようにも見えた。