え…?もしかして……
副社長……
私に………惚れてる??
そんな訳ないよね?
思い過ごしだよね?
「手に入りません。私はこれからもずっと、便利屋ですから」
キッパリ断って一線を引かなければ業務を遂行出来ない。
だから、そんな瞳で見られても何も応えられない……
心に鍵をかける事は私にとって容易い事。
なのに私は………
自ら歩み寄り緩んだネクタイに手を差し伸べてしまう。
見つめ合ったまま、キュッとネクタイを締めて……
「だから今は秘書の私じゃないんですけど…?」
仕掛けた罠にまんまとハマらないで。
駆け引き上手なんでしょ?
もっと余裕ぶってよ。
真っすぐ心に入ってこないで。
締める手に副社長の手が重なる。
「お前が欲しい……と言ったら?」
体が前に動いて近付く顔を拒んだ。
「気をつけてください……見張りが居ます」
男女間の代行は必ず数人の代行スタッフがサクラとなり散らばっている。
万が一のトラブルに備えてだ。
バッチリ監視されてる中で別のクライアントと契約に反する行為は出来ない。
そっと離れる。
「それでは副社長、月曜日に」
一礼し、何も言えなくなった副社長に背を向けた。
自分でも止めれなかった衝動に少なからず動揺している。
見張りが居なければキスしてた……?
この私が許してた……!?
有り得ない……
契約違反は御法度………
お願いだから、乱さないで。
どうか今後、面倒な事にはなりませんように………
どうしよう……自信ないかも………

