「私が一番嫌いなキスの仕方だわ、下手くそ」と言われ更に撃沈。
抵抗した際に落としたスクラッチバックを拾い上げ、ため息ひとつ。
「ったく、皆に見られてるよ?」
「えっ…!?」
指差した方向を見ると2階の事務所の大きな窓ガラスにはびっしりスタッフ達の姿が。
キャーと言わんばかりに目を隠しながらこっちを見てる。
絶句する俺をアハハと笑う乃亜さん。
「もう、恥ずかしいを通り越してるわ」ってお腹抱えてる。
とりあえずどちらにも平謝りする俺にスタッフ達も苦笑い。
「でもまぁ、私を落としたいならまずはキスから勉強すべきね」
「俺……そんな下手ですか?」
そんなはっきり言われると傷つくんですけど?
キスには自信あっただけにショックも大きい。
そんな俺にお構いなしで時計を確認し「ヤバ、遅れちゃう」ってマイペースなとこも。
「今からどこに?」
「スタジオ」
「よくわかんないけど…送ります!」
驚きながらもチラッとジープを見てる。
お、グラついてます?
見晴らし良いですよ?と言ったらニヤリと笑った。
ちくしょう、可愛い…!
「時間は大丈夫?」
「はい…!」
「じゃあ……送迎お願いしようかな」なんて照れながら言うとか反則だ。
心の中で思いきりガッツポーズした。
心配するスタッフ達にバイバーイと手を振る乃亜さんを助手席に乗せる。
自分は乗り込む前にスタッフ達に頭を下げた。
「俺が責任持って送ります…!」
駐車場に響く声で叫んだらいいねポーズで見送ってくれた。
運転席に乗り込んだら「やめてよ」と腕を優しく叩かれる。
なんか、すげぇ嬉しいんですけど?

