何もかも初めての経験が多過ぎて、正直なす術がない。
百戦錬磨の俺でももはや無力に等しい。
引き出し全部惜しみなく出しても全くなびかず、撃沈。



妹の紗和ちゃんにもらったアドバイス通りに通いつめているものの、事務所でしか会えないし素っ気ないし脈なんかほぼナシかと。
プライベートの連絡先なんか教えてもらえないし毎日モヤモヤしてる。



興味ないって言われて正直道に迷ったままだ。
これ以上フラれ続けるのも怖い……けど会いたい。
顔を見て、よく毎日飽きないね?って呆れた笑顔でも見れたらまたドン底から這い上がれんだ。



出口のない迷路に一筋の光が差す。
泣きそうになる。
「うわ、泣くな〜」って困らせてしまうけど、もうとっくに限界なんだ。



響也を本気で好きだと言った紗和ちゃんは、契約違反の責任を取って依願退職したと聞いた。
契約違反…?
何でそうなるんだよ。
おまけに別れを選ぶって男側からしたらどうかしてる。



響也も今は俺同様ボロボロだ。
俺達2人はこの美人姉妹に振り回されてる訳だけど、手に入れたい…追いかけたい…好きな気持ちは諦めきれないのは一緒みたいだ。



頂点に立って迎えに行くと言いきった響也の横顔はいつになく格好良く見えた。
あいつなりに答えを見つけたんだな。
羨ましい。
俺は……?
まだ乃亜さんに対して自信がない。



誕生日も会えなかった。
用意していたプレゼントも渡せずに途方に暮れる。
3日…4日と会えない日が続いて、1週間経ち……季節もそろそろ移ろいゆく。