「一体何考えてるの!?勘違いしないで、私の代行中に邪魔するような事したら業務妨害罪で訴えるよ?」
どんなに怒られても俺は嬉しかった。
はにかむ俺を見て大きなため息をつく乃亜さん。
ため息さえ色っぽいよ。
「動揺してくれた?」
「え…?」
「動揺してくれたなら、作戦成功…かな」
初デートの時にされたお返し。
なんてね。
「お願い、大切なクライアントなの。粗相のないように完璧にこなさなければならない。だから邪魔しないで」
あまりにも真剣な表情だから自分からも笑顔が消える。
「二度とこんな事しないで」
最後はそう吐き捨てて立ち去った。
この前の笑顔や仕草など1ミリも感じない。
怒ってるというかもはや軽蔑の眼差しに近い。
何だよ………俺だけ悪者?
俺だってクライアントじゃねぇのかよ。
契約中でなければこんな扱いなの?
俺は蚊帳の外…?
勘違いしないで………か。
本気で怒られて、軽蔑されたのも初めてだ……
突如真っ暗闇に覆われた俺の心は、この先どこに向かえばいいんだ?
好きな女に嫌われるなんて、そんなの俺じゃない。
なんで思った方の逆にいくんだよ。
なんで素っ気ないんだよ。
なんで俺の手を解くんだよ。
なんで知らない男の元に帰るんだ?
俺に見せてた笑顔も嘘なのか?
最初から演技だったの……?
なんで………便利屋やってんだよ。
握った拳は壁を叩いた。
やりきれない気持ち。
処理しきれない暗闇。
収まらない怒りが俺を支配する。
もう……どうしていいかわかんねぇ。

