オッサンもいい気になりやがって腰に手を回してるのが気に入らない。
同じ会社の同僚達も若い奥さんだと羨ましがるから余計図に乗ってやがんだ。
たくさん飛び交う2人への質問も予め用意していたのか、スラスラと乃亜さんは答えてる。



何かイライラしてきた。
仲良さそうに見つめ合って頬を赤らめてる姿とか見てられねぇ。
俺以外にもあんな笑顔見せるんだ。
なに?新婚ぶってんの?
そういう設定?



グラスを置いて足は勝手に動き出す。
俺の存在無視とか許さねぇから。
支配人のネームプレートを借りてつけた後、乃亜さんの居るテーブルへ。



「失礼します、支配人の堀越と申します。本日はこのようなパーティーを主催して頂きありがとうございます。お料理の方はお口に合いましたでしょうか?」



突然現れてホテルの支配人だと名乗る俺に一瞬動揺したものの、さすがはプロで冷静に振る舞っている。



「あ、先ほどエレベーターで…」



オッサンの方も気付いたか。



「先ほどは失礼致しました、他の会場から急いで来ましたもので。今日は心ゆくまでお楽しみください。何かあれば何なりと…」



バレないように他のテーブルにも挨拶して回る。
これで俺の存在、嫌というほど焼き付けられたでしょ?
もっと動揺してよ。
チラッと確認してるのはわかってる。



お手洗いに離れたのをチャンスに、誰にも見られない従業員用通路に連れて行く。



呆れた口調で俺を罵るんだ。