階ごとに止まり徐々に混み出すエレベーター内。
ついに一番奥の壁側に追いやられた。
隣には奇跡的に乃亜さん。
オッサンと腕は組んでるものの反対側はガラ空きだ。



肩がけのバックに触れていた手、下に降ろしたのを見逃さなかった俺はそっと小指だけ触れてみた。
混み合う中で小指だけが絡む。
互いに知らないフリ。
左側だけが熱を帯びてる。



乃亜さん………
俺に気付いて動揺してる……?
下手に動くんじゃないかって焦ってる……?



全部の指を絡めようとした時、エレベーターは23階に到着した。
サッと手を解いた乃亜さんは何事もなかったようにオッサンと降りていく。
すぐに自分も降りる。



そこはホテルの部屋がズラリと並んで……ではなく、どこかの会社が主催してるパーティー会場だった。
いくつか会場があり、奥の一室へと歩いていく。
受付けを済まし中へ入る時も一瞬振り返りついて来た俺を見た。



気にしてるの?
会員制だから中へは入って来ないだろうって安心してる?
へぇ、夫婦で参加のパーティーなんだ?
じゃあレンタル妻ってやつだね?



でも乃亜さん、知ってた?
ここのホテル、俺の会社の傘下なんだよね。
だから顔は広く知れ渡っている。
支配人を通せば簡単に入れちゃうんだよ。



二部の会議もかったるいから先に進めとくよう秘書に伝えてパーティー会場へ足を進めた。
目立つからすぐわかる。
誰よりも綺麗だから。



最初は少し離れて視界に入る位置でお酒を嗜んだ。
真っすぐ見つめてもまだ気付かない。