私が未熟なのが一番いけない。
副社長をこんな人間にしてはいけない。
もう私の為に契約しないで。
そんなすぐに騙されちゃう器じゃないでしょ。
冷静さを失ってる。
いや、失わせてるんだ。



嫌よ……マイナスな存在にだけはなりたくないの。
私と出逢う前の、何事にも揺らがない信念を持った男のままで居てほしい。
だから、この判断は間違ってないんだってわかってほしい。



「紗和、それで良いのね?」



「最初から処分はそれだったんでしょ?」



「まぁね……ちょっと厳し過ぎるかな?って躊躇しちゃったんだけど」



私だけ特別待遇される訳にはいかない。
お姉ちゃんが血の滲む思いで起業した会社だもん。
スタッフも同じ思いでそれぞれの仕事に精を出してるのに。



隣で聞いていた副社長はようやく顔を上げた。
案の定「認めない」と反論してきている。



やめて……そんな瞳で見ないで。



「紗和、ちゃんと説明してくれよ…何で辞めるなんて言うんだよ」



「辞めなきゃいけない事したの。それに値する違反行為だったんだよ」



「辞めても俺達の関係は続くよな?」



私はいつから、すがる瞳をさせるようになったんだろう。
弱々しくて脆い。
私が居なきゃダメなんかじゃなくて、私が居るからダメなんだって思えた。



副社長はもっと高みを目指せる人。
私なんかが邪魔しちゃいけないんだ。



スーっと心が冷静になっていく。



「紗和?答えろよっ…!」