「ヨッ!紗和ちゃん」
突然給湯室に現れた堀越社長。
今日はまた副社長とアポを取ってある。
「あ、お久しぶりです」
「ちょっと早く来ちゃった」
「でもそろそろ来ると思って用意してましたよ」
堀越社長専用のダージリンティー、副社長専用のアッサムティーの準備は万端だ。
「紗和ちゃんの入れるダージリンティーは最高に美味い、温度も最適だよ」
「そうですか?なら良かったです」
副社長は約束の時間まで部屋で他の
仕事をこなしている。
よっぽどの事がない限りは繰り上げたりはしない。
堀越社長もそれはよくわかっている。
だからあえて私も知らせには行かない。
「ちょっと早く来ちゃったのは……実は紗和ちゃんに相談したい事があって…」
なんだか急にかしこまっちゃって調子が狂う。
「副社長の事ですか?」
「違うよ〜あいつはどうでもいいの!」
そんなあからさまに嫌な顔しなくても……
本当、仲良いんだか悪いんだか。
するとスッと近付いてくる体。
耳元で私にだけ聞こえる声で言うの。
「紗和ちゃんのお姉さんの事なんだけど…」
一応、周りに聞こえないよう配慮してくれたんだね。
私達は便利屋だから。
「はい……何でしょうか?」
いつもとは違う真剣な顔つき。
全然おちゃらけてない。
「実は……本気で好きになっちゃったんだ」
「え?あ……はぁ」
マジですか〜?
お姉ちゃんは………難しいかと。
ほとんど脈はないかと。
うわ、どうして伝えようか?
百戦錬磨の堀越社長でも……可能性は低いだろうなぁ。

