__あ、じゃあ入る前に少しだけ話していい?
__はい、何ですか?
__離れてみて……すげぇわかったんだ。紗和がどれだけ俺を支えてくれてたか。俺がどれだけ紗和を好きで居たか。顔や声だけじゃ全然満たされねぇ……会いたくて仕方なかった……俺…お前と遠距離は無理だわ
一言一句聞き逃さないよう耳を澄まして…伝わる声に体が熱くなっていく。
また溢れちゃうじゃない……今日は泣きたくないよ……
まだ寂しい夜を過ごすんだよ?
明日…泣き腫らした目で会いたくないのに。
__紗和…会いたい……
__明日…会えるでしょ……我慢、してよ
__ごめん、無理
__私だって我慢してるよ…!電話切ったら泣いちゃうような事言わないでよ、明日目腫れてるからね?これ以上我がまま言ったらキスしてやんないから……
どんどん嘘つきになるよ……
キスしたいのは私の方なのに……
触れたくて仕方ないのは私なのに……
__泣くなよ……
__副社長が泣かせるんでしょ……
__俺の知らないところで泣いてるの耐えられねぇって言っただろ……
__泣いてないから……
__嘘つけ……泣いてんじゃねぇかよ
見えてないくせに。
声でわからないように無言で拭う。
「紗和…!」
え…?
受話器じゃないところから副社長の声……後ろから!?
ゆっくり振り返ったら……携帯を耳に当てたままのスーツ姿。
優しく微笑む愛しい顔。
「もう泣かせたくないから……飛んで帰って来た」
体が…動かない。
本当に……副社長なんだよね!?
明日のはずじゃ……?

