「はい……一応?秘書やってます」



互いに探り探りで確かに気まずい。
副社長ではなく私を呼び出すなんてよくわかんないけど、何か言いたそうにしてるのはわかる。



「わ、悪かったわよ…この前の事」



決して目は合わせない。
え、もしかしてこれを言いにわざわざ!?とは言わないでおく。
きっとプライドが邪魔してる不器用さんなんだろうね。
本当は悪い女じゃないのかも。



「もういいです……ちゃんと仲直りしましたから」



「あんたには悪いけど、響也にあんな事して…逆に吹っ切れたというか…気持ちいいくらいにフラレたわ」



ちゃんとフッたんだ………



「もう二度としないし関わらないから安心して?あんただから…潔く身を引くわ」



「はい……ありがとうございます」



ありがとうございます…なのか?
とりあえず円満解決…?



「要件はそれだけ。じゃあ…」



「あっ…!」



とっさに呼び止めてしまった。
何も考えてない完全な見切り発車。



「えっと……もうあんな無茶な飲み方しないでくださいね?体に悪いし。もしまた飲んだくれたくなったら…私が付き合いますから」



「はっ!?」



「この前は猫かぶってましたけど、実は私…有美子さんよりお酒強いですから」



「あんたどういう神経してんの!?彼氏取ろうとした相手とよく飲めるわね?信じらんない…」



「ですよね……失礼しました」



「でもまぁ、もう少し時間が経ってどこかでバッタリ…なんて事があったらその時は付き合ってもらうかも…ハハ」



私もつられて笑う。
去って行く姿を最後までお見送りして、幾分と軽くなった心はその先の仕事を捗らせた。