そんなある日、秘書課がやけに慌ただしくしていたから覗きに行くと、電話を終えた紗和が立ち上がり俺に言いにくそうにしている。



「どうした?」



「あ…あの、来月に予定していたシンガポール出張なんですが日程に誤りがありました」



「そうなの?で、いつ?」



「それが……明日みたいで」



「えぇっ!?」



どうやら向こうに手違いがあったようで日程の組み直しが急遽行われていて秘書課がプチパニック状態だ。
シンガポールへは俺の他に専務も同行する。



「本日の便は終了しておりますので明日の朝9時便のチケットを取りました。明日、成田までお送り致します」



さすが仕事が早い。
秘書課の連携プレーも板についてきたな。
専務のスケジュールも押さえれたみたいだし、今回も大きな仕事のひとつだから俺が行くしかない。



本当は秘書も連れていきたいところだけど、スケジュールの組み換えの為に他の会議には深山秘書が俺の代わりに出席する形になっている。
日本での俺の仕事を全て紗和が担ってくれるんだ。



頭がキレるから安心して任せられるけど早く終わらせて帰って来たいのが本音。
1週間会えないなんて今の俺にはキツ過ぎる。



スーツケースに荷物をまとめて朝一で紗和が迎えに来てくれた。



「行きたくないよ……」



紗和と離れたくない。
どのみち来月でも1週間離れる事は変わらないけども。
やっと心が通じ合えた今に離れるのは最高に寂しい。