驚くのも無理はない。
こんな正々堂々とした引き抜きはないだろう。
1日でも早く君を秘書にしたい想いがあからさまに前面に出ていた気もするが致し方ない。



何としてでも手に入れたいと本気で思っていた俺は後ろを振り向く余裕などなかったに等しい。
まるで駄々をこねる子供………
自分でもこんな衝動に駆られるのは初めてなんだ。



熱くなる俺の目の前に新たな人物が……?
彼女と目元が似ているその女は「深山 乃亜」と名乗り彼女の姉であり、所属する会社の社長だった。



橘建設の人間じゃないっ!?
ならば好都合じゃねぇか。
派遣会社なら話が早い、と思っていたら便利屋っ!?



べんりやっ!?



代行業社だと!?



クオリティー高すぎるだろ!!



こんな人材、便利屋なんて勿体無さすぎる!!
ますます手に入れたくなった!!
絶対に絶対に、、、落とす!!



社長である姉はどうやら話がわかる人間のようだ。
どこよりも高く買ってやる。



君を………俺の隣に………



研修期間を設けて秘書を代行する事になった。



代行…?



いや、違う。
今から君は俺の専属秘書であり、人生のパートナーとなるのだ。
随時仕え、側に居る存在に………



契約書にサインした後。



「わかってらっしゃるとは思いますが、あくまでも代行スタッフですので過度な拘束及びパワーハラスメント、業務以外の接触行為は原則禁止です」



念を押すように言う深山代表。
俺を誰だと思っているんだ。
何百、何千の人間を動かしてきてるんだぞ。