突然の悪夢だった。



酔い潰れた有美子を介抱してくれていた紗和の元へ水を持って行ったら急に有美子にキスされた。
しかも紗和の目の前で。



酔ってるとは言え、一番やっちゃいけない事だ。
何を言っても拒絶する紗和に恐怖心が芽生えた。
このまま離れていく気がして……だってあの瞳……完全に心を閉ざしてる。



俺の手を払いのけた紗和。
泣いてる……心も体も。
紗和が行ってしまう。
そうだよ……もうレンタルなんかじゃない。
ありのままの紗和で居てほしいと思ってる。



行くな……行かないでくれ。
ちゃんと目を見てくれよ。
離したくない。
お前を失ったら俺は………



追いかけられないもどかしさ。
時間が必要なんて……そんなの心が離れるに決まってる。
無理に答えを出そうとするから一方通行で独りよがりな結論に達するんだ。
俺は納得しないぞ。



帰った後……リビングに戻るとまだ飲みほうけてる野郎ども。



「悪い、お前らもう帰れ……」



何も聞かずに察してくれ。
タクシーを呼んで無理やり帰した。



後で友達の一人が
「響也、よくわかんねぇけど…それマズイんじゃない?」と口元を差された。
鏡を見ると紅い口紅がべっとりついてある。



あ……ヤベ。
このまま紗和と話してたのか。
余計傷付けてた……本当に馬鹿野郎だ…俺は。
会いたい……今すぐ会いたい。
会ってもう一度謝りたい。



一人になんかしたくない。
俺の見えないところで泣いてほしくない。
抱きしめたい。
触れていたい。
あんな泣き顔見たら……ほっとけないよ。