やめて……今は抱きしめてほしくない。
触れていたくない。
「ごめん……一人になりたい」
「あいつとは本当に何もないから…!俺が好きなのは紗和だけだって信じてくれてんだろ?」
無理……声も聞きたくない。
顔も見たくない。
全部…言い訳に聞こえるの。
「離して…っ」
「嫌だ…!今帰したくない…!紗和と離れたくない…!」
違う………これは私の問題だ。
私が……自分を保てなくなってるだけ。
受け入れられないの……理解していたつもりだったのに。
想像するのと実際目の当たりにするのは全然違う。
私だけが………未熟だ。
溢れる涙が止まらなくなる。
心が荒んでいく。
こんな時……どうすればいいの?
拒絶する体だけが今の私の全てなの。
これが本当の私。
「紗和……行くなよ」
サーッと血の気が引くように心を閉ざした。
「帰る……」
「紗和…っ」
見つめ合う2人。
何を言ってもどれが正解なのかわからない。
次の言葉が出て来なくて掴まれてる手を振り解いた。
「紗和、行くなって」
「私レンタルじゃないから…!」
そう言えば手を離してくれると想像がつく。
もう顔見れない。
「ごめんなさい……時間、ちょうだい」
背を向けた私に副社長は最後にぶつけてくる。
「俺の気持ちは変わらないから!紗和しか居ないから!」
立ち止まり瞳を閉じる。
何も答えないままその場を後にした。
これ以上醜い自分を見せたくない。
今日の私はどうかしてる。
あまりにも勘違いし過ぎてた…?
私だけに向いてるってどこかで思い上がってたんだ……
キスされた跡残して……何を信じるの?
こんなふうになればあの女の思惑通りだってわかってるけど、免疫のない私には結構キツい。
悔しいけど……ヤられた。

