余裕すら感じていたのに。



何度も何度も何度も………



脳裏にチラつくあの顔………



引き寄せた時に触れたあの華奢な身体………



艷やかな唇………視線…………



眼鏡が外れた時、再び心を奪われた。
頭から離れない………



アプローチされ慣れていた俺に稲光を降らせた女………



久しぶりに男としての本能を蘇らせてくれた女………



完全にオスのスイッチが入った俺は……湧き上がる想いに悶々としていた。
止め方を知らなくて、落ち着きが戻らなくて歯止めが効かない。



来ない来ない来ないっ……!!!
何故来ないっ!?
周りに居る女達と違う事くらい知ってはいるが、週明けにはまた会えるのに、それすら待てない余裕すら与えないあの女に初めは文句をつけるつもりで居た。



「林、車出してくれ」



こうなったら誰も俺を止めれない。
橘建設から引き抜きでも何でもしてあの女を側に置く。
真っすぐ見つめ至近距離まで攻めればきっと骨抜きになるはず。
今のところこの俺は、無敵の無敗だ…!




2回目に会えた時も胸の奥が熱くなった。
次こそ逃したくなくて腕を掴んでしまった時は顔から火が出るほど恥ずかしくなったが、ここまで来て引き下がる訳にはいかない。



〈君が、欲しい〉と何度も言いそうになった。
このまま手を取り奪い去ってしまったら…君はどんな顔をするだろうか。


そんな映画みたいな事、出来る訳もなく。
ただ素直に純粋に「彼女を預かりたい」と橘建設の事務所でそう伝えていた。