「うん、大丈夫。あ、お水一杯貰える?」
抱きしめたまま受け答えする。
「え?あ……もしかして有美子も一緒?」
「うん」
「わかった、持って来る」
ドン…と押され一瞬離れたけどフラつく体を支える。
「わかってるわよ……こんな時でも真っ先にあんたを心配してるし…完全に負けてる事くらいわかってる…」
目がすわってる………
逆撫でしてしまったか。
酔ってるから本当扱いにくい。
「でもね……ほんの少しでも隙があるなら私は遠慮しないから…絶対認めてやんないんだから…!」
暴言は我慢強い方です……
謝罪代行もたくさんこなしてきましたから。
こんなのはまだまだ序の口。
支えてた手も払いのけられる。
「私の方が響也を想ってる…長い歴史があるの…!パッと出て来たあんたに取られてたまるかってんの…」
はい……全部吐いてください。
今思う事全部、ひとつ残らず吐き出してスッキリするまで付き合いますよ?
ちゃんと最後まで聞きますから。
再びノックがして「紗和?お水持って来たよ」と副社長が登場。
気を取られた瞬間。
「お水なんていらないから」とドアに向かい出て行こうとした有美子さんを止める術がなかった。
私は便利屋だから大抵の事は想定の範囲内だし取り乱す事もない。
常日頃冷静に対処出来る器は兼ね備えていた筈だ。
余裕を持って先の先まで行動を読み取っていたつもりだったのに……
ドアを開けて出て来たのは私じゃないから副社長はびっくりしてる。

